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麻痺以外の後遺症

脳梗塞による後遺症には、半身麻痺以外にも言語障害や意識障害(気分障害)、高次脳機能障害など、梗塞によって損傷を受けた脳の部位によって障害の出方が異なります。このページでは、脳梗塞の後遺症について、麻痺以外の後遺症にフォーカスを当て、症状やリハビリ方法について解説します。

言語障害の症状とリハビリ方法

言語障害の症状

脳梗塞や脳卒中で引き起こされる言語障害には失語症や運動障害性構音障害などがあります。

言語障害と一口に言っても、症状は様々。例えば、失語症は大脳の言語領域が損傷し、言葉がうまく使えなくなる障害です。脳のダメージを負った部分によって話す・聞く・読む・書くなどそれぞれの能力の障害度合いや有無もことなります。失語症にも色々なタイプがありますので、リハビリをする際には、失語症のタイプをきちんと把握した上で、適切なリハビリを行うことが大切です。

また、運動障害性構音障害とは、大脳の言語領域ではなく、言葉を発するための信号を出す脳の部位が損傷を受け、生じる障害です。舌や声帯がうまく動かせ無くなる(麻痺)ことなどにより、話すのが困難になるだけで、失語症とは障害の原因・症状が異なります。運動障害性構音障害の場合は、話す代わりに「書く」など別の言語コミュニケーション手段を使えるようにするリハビリも視野に入れてリハビリ計画が作られます。

出典: 国立循環器病研究センター「循環器病情報サービス|[15]脳卒中と言葉の障害」

言語障害のリハビリ方法

脳梗塞などにより言語コミュニケーションを行う上で必要な機能を担う部分にダメージを負い引き起こされた言語障害のリハビリは、言語聴覚士の指導のもとリハビリが行われるのが一般的です。

言語聴覚士は、「話す」「聞く」「食べる」のリハビリに関するスペシャリストです。 言語障害のリハビリは、障害の原因が失語症や構音障害といった「うまく話せない」「話が理解できない」「文字が読めない」などの症状に対してアプローチしていきます。

リハビリの方法は、大きく分けて個別リハビリと集団コミュニケーション療法に分けられます。

絵や文字カードを使い、話をスムーズにできるように練習したりするリハビリの目的は「もともとあった機能を回復させる」だけでなく「今ある機能(障害)と上手に向き合い生活していく」という目的もあります。

今現在のリハビリは,障害の軽減ではなく,“いかに今の体の状態を維持するか”を目的として「向上」ではなく「維持」オチ雨考え方に変わってきた。私自身が脳性麻痺と脳梗塞の合併で言語障害もあり,行政とかNTTの104番の電話番号を調べるときなかなか通じない.病院でも通じない.日常生活を送るときに非常に困る状況が多々ある.脳梗塞で倒れ,3年間寝たきりの生活を送り,自分の身体の維持のためにリハビリは不可欠.言語訓練も不可欠なもの.今現在は私自身もリハビリに対しての考え方,捉え方が少しずつではあるが変化してきていることも事実で,リハビリテーションを肯定している.

出典:(PDF) 『〈コミュニケーション障害への社会的支援:当事者,支援者とのネットワークづくり〉コミュニケーション・アシスト』コミュニケーション障害学,21(2)2004[PDF]

意識障害(気分障害)の症状とリハビリ方法

意識障害(気分障害)の症状

人間の意識には、「覚醒」と「認知(自分と外界を正確に認識すること)」の2つがあると言われています。覚醒は、脳幹部分、認知は大脳皮質部分が担っており、脳梗塞によりどちらかの部位が損傷を受けると、意識障害を生じることがあります。

意識障害と間違えやすいのが、意識消失です。意識消失は、失神などで一時的に意識を失うことで意識障害とは全く異なります。意識障害の程度を評価する方法にはJCS(japan Coma Scale)やGCS(Glasgow coma scale)などがありそれぞれで少しずつ重症度を図る基準が異なります。

大まかに言ってしまえば、刺激しなくても意識が比較的覚醒しているものの、ぼんやりしていたり、自分の名前や生年月日が言えない段階から、痛み刺激にも反応しない程度まで重症度は幅広く、リハビリの内容も重症度によって変える必要があります。

脳血管性障害, 脳手術後などの中枢性疾患に起因する運動知覚機能障害に意識障害を随伴している患者に遭遇することがしばしばみられる. 意識障害を伴う患者は通常回復意欲, 自発性, 疎通性が極めて乏しく, 特に2桁以上の重度の障害例では随意運動も消失し, 予後のよくない場合が多い.

出典:(PDF) 『意識障害患者のリハビリテーション』医療,42(1)1988 [PDF]

意識障害(気分障害)のリハビリ方法

意識障害(気分障害)のリハビリは、意識障害の程度によっても大きく変わります。また、刺激を与えることで、意識覚醒を促すなどの手法として、音楽療法や運動療法、味覚刺激を加えた口腔ケアなど五感を刺激する方法シュシュ検討されています。

ここでは、研究報告を参考に、リハビリ方法をご紹介しましょう。

まずご紹介するのが、脳活動計測機器を使って、意識障害を持つ患者さんに対して認知リハビリテーションを行った事例です。この事例では、声かけや肩たたき、鏡、エッセンシャルオイル、飴、家族の写真など様々なものを使って患者さんの感覚を刺激。各刺激ごとにどの程度脳活動が生じているかをモニタリングしながら、有効なリハビリ方法を探っています。

脳損傷後の遷延性意識障害は大きな社会問題であり,この状態を改善するための治療法の確立が望まれている(山本, 2010)。「はじめに」で紹介した音楽運動療法は,覚醒水準が上がった状態で行われる認知リハビリテーション(片山ら, 2008)の1つの有効な方法であると考えられ,たとえばNodaら(2004),下野(2010)によっても症例が報告されている。Nodaら(2004)は,26名の遷延性意識障害患者(頭部外傷 12 名,くも膜下出血9名,それ以外の脳卒中3名,低酸素脳症2名)に3ヵ月の音楽運動療法を施行した結果,脳損傷の原因あるいは受傷後の療法開始時期によって効果の差がみられるものの,日本意識障害学会の状態スコア,反応スコアともに改善がみられたことを報告している。

出典:(PDF) 『脳活動計測機器を用いた意識障害患者の 認知リハビリテーション(2 例)』認知リハビリテーション,16(1)2011 [PDF]

高次脳機能障害の症状とリハビリ方法

高次脳機能障害の症状

脳梗塞により脳の記憶や思考、判断などをつかさどる部分が損傷した際に生じるのが高次脳機能障害です。

症状としては、「記憶障害」「注意障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」などが挙げられます。

例えば、記憶障害では新しいことが覚えられなかったり、同じことを繰り返し質問したりします。

また、注意障害は、ぼんやりしていることが増えたり、ミスが増えたり、二つのことを同時に作業できない、作業を長時間継続できないなどの症状が代表的です。遂行機能障害は、計画を立てて物事を実践することがむずかしくなる障害で、仕事をする上で約束の時間に間に合わないなどの不都合が生じます。

また、周囲の人を大きく戸惑わせてしまうのが、社会行動障害です。社会行動障害は、興奮して暴力を振るうようになったり、自己中心的になったり、大声を出したりと、突然性格が変わったように感じられることも。

このように、高次脳機能障害と一口にいっても、症状は多岐に渡ります。

高次脳機能障害のリハビリ方法

高次脳機能障害は、医学的なリハビリに加えて、社会や職場復帰をするための専門的な社会的サポートが求められます。

例えば、遂行機能障害があっても仕事ができるように、周囲が職場環境を整える、というのもその一つです。日本では、高次脳機能障害を持つ方に対して、職業リハビリテーションまで行っている医療機関はまだまだ少ないのが現状です。退院後の就労支援も必要とされるからこそ、今後、高次脳機能障害に対するリハビリ支援体制の充実が求められるところです。

参照:(PDF) 『高次脳機能障害』理学療法学supplement,22(3)1995 [PDF]

参照:(PDF) 『日米における高次脳機能障害者支援の現状』高次脳機能研究,31(2),2011 [PDF]