

脳梗塞の半身不随のことを知って、予防・再発防止に役立てましょう。

右片麻痺は、脳梗塞などにより脳の左側(左脳)を損傷することで引き起こされる症状です。
脳からの神経経路は、右脳が体の左側を、左脳が体の右側を司るという特徴があります。そのため、損傷を負った脳と反対側に麻痺が生じるのです。
右片麻痺とは逆に、脳の右側に損傷を負い、身体の左半分に運動麻痺などの障害が出るものを左片麻痺と呼びます。
一般的に左脳にダメージを受けた場合、言語を司る部分や計算などの動きを司る部分が損傷されやすく、症状として「失語症」「計算障害」「書字障害」「失認」などが現れます。また、運動障害や感覚障害は身体の左部分に生じます。
右片麻痺で特に特徴的なのが「失語症」「計算障害」「書字障害」「失認」「運動機能障害」の4つの症状です。それぞれの症状について詳しく見ていきましょう。
言葉を操ることを司る脳の部分がダメージを受けると、失語症といって「聞く」「話す」「書く」「理解する」「読む」などが障害されてしまいます。
失語症は右片麻痺の中でも出現頻度が高く、人によって症状の出方は様々。「言葉は流暢に話せるのに、内容が理解できない」というケースもあれば、「理解はできるけれど思った言葉がうまく話せない」というケースもあります。また、文字がかけないなどと言った書字障害も失語症の一つとして考えられています。一口に失語症といっても、色々なタイプがあるため、その人にあったリハビリを行うことが大切です。また、言葉が出てこず、会話が困難になるため、家族など周囲の人間の理解とサポートが重要です。
計算障害とは、その名の通り計算ができないという症状です。計算障害も、失語症の一種として分類されることがあります。
失認とは、物や図形を見てもそれがなんで有るかを言えない、対象をひとまとまりとして理解できないなどの障害がおこる症状です。身体失認と言って、自分の体に対する空間認知ができなくなることもあります。
後頭葉と呼ばれる脳の部分がダメージを受けて生じる症状です。
片側身体失認は 、身体半側に関する認知障害である。概念的に最も古いのは、(1)病態失 認(anosognosia)で ある。Fredericks2)は 、片側身体失認を意識されない片側身体失認(unconscious hemiasomatognosia)と(3)意識 された片側身体失認(conscious hemiasomatognosia)との2つに分類している。
右片麻痺の運動機能障害は、身体の右側に生じます。右利きの方の場合、文字を書くなどの動作ができなくなることもあり、生活に大きな影響を与えます。麻痺した右半身が動かせないことにより歩くことや立ち座りなどが難しくなる場合もあり、身体介護を必要とするケースもあります。
また、顔の右半分が動かせなくなることで、言葉を喋ったり食事をしたりが難しくなったり、視覚や聴覚に影響が出ることがあります。
運動機能障害の程度は人によって様々。障害の程度に合わせて、また、ライフスタイルに合わせて理学療法士らとマンツーマンで機能回復や、麻痺と上手く付き合っていく方法をトレーニングしていくこととなります。
脳卒中は片麻痺をはじめとする多様な機能障害を生じ, 日常生活活動 (Activities of Daily Living :以下, ADL) の制限や生活の質 (Quality of Life :以下, QOL) の低下などが引き起こされる. そのため, 理学療法はこれらを改善し生活を再建するための一翼を担っている. 現在のリハビリテーション (以下, リハ) 医療体制は急性期 ・ 回復期 ・ 生活期に機能分化されている.
出典: (PDF)『脳卒中片麻痺患者におけるトイレ動作の自立に対する 立位バランスの影響 』愛知県理学療法学会誌,29(2),2017[PDF]
右片麻痺の症状は、ダメージを追った脳の部分によって実に色々です。ここでは、代表的な症状を例に、リハビリ方法をいくつかご紹介しましょう。
右片麻痺で失語症となった場合、家庭でも会話の仕方をほんの少し気をつけるだけでコミュニケーションが取りやすくなります。たとえば、何か話しかける際には、フレーズ単位で間をあけて、ゆっくりと理解しやすい言葉遣いを心がけるといいでしょう。
『今日の晩御飯はカレーライスでいいですか?』という話をするとします。一度に一文を言ってしまうのではなく『今日の、晩御飯、の話です。』『カレーライス、にしようかと。』『いいですか?』というように、文節を分け、一文もできるだけ簡潔にするのがポイントです。
ただし、子どもに言葉を教えるような口調や態度はとってはいけません。相手の気持ちを尊重し、本人が意思疎通にストレスを感じないように気を配りましょう。
また、言葉だけではなかなか内容が理解できない場合には、文字や絵、ジェスチャーなどを使うのも有効です。
よく使う言葉は、カードに書いておき、それを見せながらコミュニケーションを取るのもいいでしょう。飲み物カード、食べ物カード、はい・いいえカードなどをまとめておくと使いやすくていいですね。
また、話しかける際にも、できるだけジェスチャーを使うなどして、わかりやすく相手に伝えられるよう心がけましょう。
右片麻痺で発話がうまくできないこともあるでしょう。言葉を発することが難しい場合には、答えがはい/いいえで答えられる内容にして話しかけて見ましょう。
うまくはい/いいえが言えなくても、うなづく、首を振るなどのジェスチャーで答えることができます。
言葉を理解する脳機能がダメージを受けた場合、会話の内容を本当に理解できていない場合があります。本来ならばノーであることも、イエスと答えてしまうこともあるかもしれません。
同じ内容の会話でも、理解できているかを時折確認するようにするとリハビリが見当違いな内容にならずにすみます。また、コミュニケーションを円滑に図る上でも、どんなときにつまずきやすいかがわかれば、対策が練りやすくなります。
右辺麻痺で失語症を発症した方とコミュニケーションを取る場合、家族はついつい会話を先回りしてしまうことがあります。また、失語症によって話をしたいのだけどうまく言葉にできないことは大いにあり得ます。言おうとしていることを先回りしたりすれば、本人の自信をなくしてしまったり、伝えたいことを伝えるのを諦めてしまったりするかもしれません。
「待つ姿勢」を大切にしながら、試行錯誤を重ねてコミュニケーションの方法を見つけていきましょう。
失語症の方とコミュニケーションを取る中で、ときには、言語コミュニケーションがうまく成り立たないことも出てくるでしょう。「待つ姿勢」を常に心がけて、相手の言いたいことをじっくりと引き出すことも大切です。また、イエス・ノーで答えられる話しかけ方をするなどの工夫もいいでしょう。
とは言え、こうした工夫・心構えをしたとしても、どうしても会話が成立しないこともあります。
そんなときは、わかったふりをするのではなく「一生懸命考えて見たけれど、ごめんなさい、よくわかりません」と伝えることもいいでしょう。とはいえ、すべての場合で当てはまるわけではありませんから、本人の気持ちを大切にしながら、その場その場で判断をしましょう。
何か話しかけた場合に、言葉の意味がわからず話が伝わらないことがあります。
話し方を工夫してもどうしても伝わらないときは、同じ内容でも言葉のチョイスを変えて見るのも有効です。また、話言葉にこだわらず、文字や絵を使って伝えて見てもいいでしょう。
右片麻痺の症状は、損傷を負った脳の部位によって現れ方も程度も人それぞれです。失語症だけの方もいれば、運動機能麻痺などが生じることもあるでしょう。大切なのは、脳卒中によって右片麻痺になった方が、どのように日常に復帰する手助けができるかを考えることです。
言語聴覚士や理学療法士さんなど、プロのリハビリ専門職のアドバイスももらいながら、ご家庭でもぜひリハビリにつながるコミュニケーションや暮らしの工夫をしてみましょう。