

脳梗塞の半身不随のことを知って、予防・再発防止に役立てましょう。

脳梗塞の後遺症では半身麻痺などによって筋肉が極度に緊張してしまうなど、理学療法士によるマッサージがリハビリには不可欠となります。これは、筋肉を和らげたり疲労を回復したりといった一般的なマッサージの目的だけでなく、筋肉の収縮力をできるだけ取り戻したり、感覚機能を刺激するなどといった目的もあるわけです。また、運動療法などをスムーズかつ効率的に実践するためにも、マッサージを組み合わせる意味合いがあります。
そして、入院中や退院後の自宅では、家族によるマッサージも大切。入院中なら、ベッド上でできるマッサージをすることになり、これはリハビリのアフターケア的意味合いもあります。マッサージする方もあまり重労働にはなりませんし、患者の方もケガのリスクなどが少ないので、双方ともマッサージに慣れるにはいいでしょう。
脳梗塞からの回復を目指す患者に対して、家族がマッサージをする際にあたっての基礎知識を簡潔にまとめてみましょう。
マッサージをする主な部位は以下の大きめの筋肉です。
マッサージは指先で押すのではなく、掌底部分をあててある程度力を入れて円を描くように揉むのがポイント。軽く揉むレベルだと皮膚にしか届かないので、その下の筋肉をイメージして、押し込むようにするといいでしょう。
なお、身体の障害がある片側だけをマッサージするのではなく、健康な側の筋肉にも施術をしましょう。これは、健康な側に普通以上の負荷がかかっているからです。
脳梗塞のリハビリでは、患者の血流状態をきちんと把握してマッサージをしなければなりません。
そもそも、脳梗塞は動脈硬化が原因で起きますが、血栓があるような状態で強くマッサージをしてしまうと、その刺激によって血栓が脳や心臓に飛んでいってしまう危険性があります。
逆に、血流改善のためにワーファリンなどの処方薬を摂取していると、血液がサラサラになるものの出血しやすくもなります。そのため、強めのマッサージによって皮下出血することもあるのです。
家族がマッサージを行おうと思った場合、やはり事前に医師に相談してから行なった方が確実だといえるでしょう。家族としては状態を改善するためにできることは何でもしてあげたいといった気持ちから率先的にマッサージを行う気持ちもわかりますが、それがかえって状態を悪化させる結果になってしまったら大変です。
マッサージをしても良いのか?ということを事前に確認し、具体的にどのような方法を実践すると今の状態を改善するのに役立つのか指導を受けた上で実践した方が確実で安心できます。
マッサージを効果的に行うためには、目視することができない筋肉や靭帯、骨といったものを理解した上で行わなければなりません。これがわからずに適当に行うと効果的なマッサージができないだけでなく、状態を悪化させてしまうこともあるからです。
特に注意しておかなければならないのが、マッサージを行う際の力加減だといえるでしょう。中でも押す・揉む・叩くといった動作を行うマッサージの場合は専門的な知識を持っている方が行なった方が良いとされています。
といっても、マッサージといえばこれらの動作を伴いますよね。そのため、家族が行うマッサージは必ず専門家の指導を受けた上で行うか、リラクゼーション目的を中心として、さする程度の簡単なものに押さえておいたほうが無難です。
自己判断で「揉めばいいはず」と適当なマッサージは行わないように十分に注意しておきましょう。
マッサージは、何となく良さそうといった理由で行なってしまう方もいるのですが、具体的な働きやメリットについても押さえておきたいですね。
代表的なメリットとして挙げられるのは、次のようなことです。
半身不随や麻痺といった症状を抱えていると、どうしても精神的に辛いと感じることも多くなります。そういった時にもリラックス効果を持ったマッサージを行えば、精神的なストレスを軽減することにも繋がるでしょう。
病院で行うマッサージは少し緊張してしまうものの、家族が行なってくれるマッサージは緊張せずに受けられるので気持ちよく感じる方も多いようです。
また、マッサージ以外にもリハビリを行なっていくことになりますが、しっかりマッサージを行っておくことによりリハビリのパフォーマンスも向上させることができます。結果的にマッサージをしない場合に比べると短期間でリハビリの効果が出やすくなるともいえるでしょう。
脳卒中の後遺症として痛みを伴うしびれがある場合には特に効果的とされています。半身不随や麻痺があると入浴をするのも大変なことではありますが、ここでは足浴のためにお湯の入った足浴用ポリバケツを使うので安心です。
41~42度のお湯を用意し、10分ほど足浴を行います。終了後にタオルで水分を拭き取ったらリクライニング椅子で楽な姿勢をとり、保湿用クリームを塗ってから15分間ほどマッサージを行いましょう。
マッサージとしては次のような方法があります。
以下の論文ではフットケアセラピストの資格持っている方が行なった場合の結果について解説されています。こちらでは、マッサージ後に状態が良くなったとの結果が出ているので、参考にしてみてはどうでしょうか。
また、心拍数も低下し、リラクゼーション効果も確認されたそうです。
参考:(PDF)日本看護技術学会誌 Vol. 13, No. 1:脳卒中後遺症としての痛みしびれに対する足浴後マッサージの効果[PDF]
先述したように、マッサージだけで高い効果を出そうと思った場合にはある程度の力を入れなければならないものの、素人が本格的なマッサージをするのはリスクも大きいです。
そこで、家族が行うマッサージは最低限のものにしておき、これとストレッチを組み合わせることにより高い効果を期待しましょう。
ただ、半身不随・片麻痺といったものが発生しているとストレッチ自体も容易なことではありませんし、何をすれば良いのかわからない方も多いはず。
そこで、最低限知っておきたいポイントから押さえておくことが大切です。
ストレッチといえば、柔軟体操を想像するとわかりやすいでしょう。ここからも想像できるとおり、体をやわらかくするのに役立ってくれます。
半身不随や片麻痺といったものが発生するとどうしても体内の血液循環が悪い状態になりますよね。すると、関節が固まりやすくなってしまい、拘縮と呼ばれる状態に繋がってしまうこともあるのです。
ストレッチを行うことにより血流を促進する働きが期待できるだけでなく、関節の可動域を広げることができます。
また、血流の循環が悪くなっているために緊張状態になっている筋肉の状態を和らげることもできるほか、リラクゼーション効果も期待できるのです。
これは、最適なストレッチを行うことによって、リラックスをしている時に優位になる副交感神経と呼ばれるものが活発になるため。
1人でストレッチをするのは大変なことなので、家族がサポートしましょう。
ストレッチといえば、前屈やひねり運動など、体1つあればできる動作が魅力です。
しかし、自分の体で行うストレッチと、誰かに行うストレッチでは訳が違います。自分の体なら「これ以上動かすとまずい」ということが容易に判断できますが、人に行う場合にはどこまでなら大丈夫なのか加減がわからないことがあるからです。
リハビリのためのストレッチは無理をして行うのではなく、できる範囲で実践するように心がけましょう。
また、反動で行うのではなく、ゆっくりと体を伸ばすことが大切です。
筋肉や筋を20~30秒ほど伸ばします。呼吸をとめて行うのではなく、しっかりと深い呼吸をして行うのがポイント。
時間が経過したらゆっくりと元に戻し、2~3セット行います。関節を曲げる際にはちょっとした動作でも痛みを感じることがあるので、簡単なものから始め、様子を見て相談しながら可動域を広げていくことが重要です。
こちらもできれば一度専門家に相談し、指導を受けた上で行いたいですね。
※こちらの記事も読まれています。